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残った刀を地面に突き刺し、フラフラの身体を支えて立ち上がる。
そして片手を蹴られた側頭部に当てて小さく呟いた。
「【聖光天恵】」
途端、今まであった痛みもなくなり、視界も正常に。
練習しといてよかったぜ……。
一方、男はと言うと、突き刺さっていた俺の刀を引き抜いてそこら辺に投げ捨てる。
流れる血も何のその。男は黙って俺を見た後、グルリと周りを見回した。
そうして再び俺の方に顔を向けてポツリと一言。
「ちょっと本気出さないとな……」
「え?――」
刹那、男の身体から魔力が……炎が噴き出す。
あれでもまだ本気じゃなかったのか……!?
「少し遊びすぎた。今度こそ終わりにしよう」
そう言って男は地面に手をつく。
何する気か知らないが、させるかよ!
俺は刀を持っていない手を男に翳して叫んだ。
「【光焼――」
「【灼熱の業火】」
ヤツの冷たい声がやけに響く。
一瞬。一瞬で景色がオレンジ色に変わった。
地面から噴き上がった火柱が、ヤツを中心に広がってくる。
例えるなら、炎の“カベ”。例えるなら、炎の津波。
逃げ場は、後ろしかない。
思いっきり地面を蹴って後ろに跳ぶものの、運悪く男との距離が近すぎた。つまり、逃げきれない……。
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