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だがよく考えれば男は翔の連撃を軽々と避けていたほど。俺達の攻撃は空を斬るばかり。
「さっきの小僧とお前で同士討ちさせようと思ってたんだが……やはり上手くいかないな」
「ふざけんな、よ!」
彩華の攻撃を避けた直後に剣を振るっても、男はわかっているかのように躱す。
くそっ!何で当たらないんだよ……。
「教えてやろうか?」
「っ!」
俺の心を読んだかのように目の前に現れた男。
フードに隠れた顔が目の前にあり、口元が見える。
思わずそっちを見ていた俺の目に映ったのは、ニヤリと歪んだ唇だった。
瞬間、腹部に鈍い痛みが走る。
「ぐふっ……しまっ……た……」
傾く身体を支えようと男にしがみつくが、支えきれずに膝をついてしまう。
「一言で言うなら経験だ。お前達みたいな学生のお遊戯じゃない。命を懸けた戦いのな」
男にしがみついていた手もズルズルと下がっていき、俺の身体はとうとう地面に倒れ込んだ。
「もう寝ていろ。クククッ……目が覚めた時の反応が楽しみだ」
意識を失う寸前、そんな声が聞こえてきたような気がする。
そして俺は、深い深い闇の底へと意識を手放した。
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