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「さっき言ったでしょ。早くしないとって。そのためにボクがここに存在(いる)んだから」
そう言った零の表情はなんだか……悲しそうだった。
だが悪いけど今はそのことに疑問をもってる場合じゃない。
「頼む、零。教えてくれ。俺の力を」
「教える必要はないよ。お兄ちゃんは知ってるんだから。ただ忘れてるだけ。思い出して。自分の力を……コードの力を」
零がその小さな手を俺の頭の上に乗せる。
すると俺の頭の中に、あるものが浮かんできた。
それは……扉。
何の変哲もない、至ってシンプルな小さい扉。
俺はその扉のノブを回してゆっくりと開ける。
わずかな隙間から零れた光が俺の目に入った瞬間、奥底に眠っていた記憶が目を覚ました。
――ズキッ!
「っ!」
その時、突然襲ってきた頭痛に思わず零から跳び退く。
何だ……今の?
「やっぱり一度に全て思い出すのは無理だったか……。どう?自分の力はわかった?」
「……少しだけな」
痛む頭を押さえながら口を開いた。
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