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飛んでくる炎を察知した男は横に跳ぶ。
同じく架神も横に転がって躱した。
「二宮っ!僕まで巻き添えにする気か!」
「避けたんだからいいだろ!結果オーライだ!」
叫び合う2人を余所に、男は一旦距離をとって俺達3人を見比べる。
「うぜぇな……。こんな傷ばっかりつけやがって」
そして手に握っていた俺の刀を地面に深く突き刺すと、ゆっくりと右手を上げ始めた。
そうだ、来いっ!俺は武器も持ってないんだ。魔法を使え。
「我求めるは全てを焼き尽くす灼熱の炎……」
来たっ!魔法だ。
「汝に捧げるは全てを呑み込む龍の焔……」
そこまで詠唱すると、男の足下に大きめの魔法陣が浮かび上がる。
同時に、陣の周りに沿って炎が燃え上がった。
「集い来たれ、炎の精霊よ……」
それは男の周りをグルグル回り、蜷局(とぐろ)を巻く。
この詠唱の長さ……上級魔法か!
「我が盟約に従い、彼の者を喰らいつくせ……」
そこで詠唱がピタリと止まり、上げていた右手を俺達に……俺に向けた。
男が呟く。
「【紅蓮纏いし炎龍】」
瞬間、蜷局を巻いていた炎が形を変える。
翼も手足もない、紅き巨大な炎龍へと……。
「俺のとっておきだ。有り難く思え」
そう言って男が指をパチンッと鳴らすと、いよいよ炎龍が動き出した。
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