覚醒

14/16
前へ
/309ページ
次へ
一度だけ見た、あの詠唱と魔法陣。 必要ないと思ってたけど、まさか使うことになるなんてな……。 「明瞭たる光よ、我が剣(つるぎ)となりて、魔を薙ぎ払え……」 これが、最後の魔法だ。 「【明光剣】」 そして、それは目が眩むような白い光と共に、俺の右手に現れた。 形だけなら何の変哲もないただの剣。 しかしその剣の刃の部分は白みを帯び、剣の周りに白いオーラのようなものが纏わりついている。 俺は自分の右手に目をやり、魔法の成功を確認すると、残った限りなく少ない魔力を足に込めて力強く地面を蹴った。 魔力が少なくてもそれなりには動くことができる。 数歩で龍牙達の間を駆け抜け、数歩で男の目の前まで移動し、剣を振るう。 今まで茫然としていたように立っていた男は、ハッと自身の剣を持ち上げて受け止めた。 「……まさか覚醒していたとは」 「あぁ、おかげさまでな」 「チッ、面倒なことを……!」 どうやら男は俺の力までは知らないらしい。 迂闊に近付かない方が賢明とでも判断したのか、俺との距離を離そうとする。 だが、 「逃がすか!」 俺は空いた左手で男のコートを掴んだ。  
/309ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12223人が本棚に入れています
本棚に追加