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一度だけ見た、あの詠唱と魔法陣。
必要ないと思ってたけど、まさか使うことになるなんてな……。
「明瞭たる光よ、我が剣(つるぎ)となりて、魔を薙ぎ払え……」
これが、最後の魔法だ。
「【明光剣】」
そして、それは目が眩むような白い光と共に、俺の右手に現れた。
形だけなら何の変哲もないただの剣。
しかしその剣の刃の部分は白みを帯び、剣の周りに白いオーラのようなものが纏わりついている。
俺は自分の右手に目をやり、魔法の成功を確認すると、残った限りなく少ない魔力を足に込めて力強く地面を蹴った。
魔力が少なくてもそれなりには動くことができる。
数歩で龍牙達の間を駆け抜け、数歩で男の目の前まで移動し、剣を振るう。
今まで茫然としていたように立っていた男は、ハッと自身の剣を持ち上げて受け止めた。
「……まさか覚醒していたとは」
「あぁ、おかげさまでな」
「チッ、面倒なことを……!」
どうやら男は俺の力までは知らないらしい。
迂闊に近付かない方が賢明とでも判断したのか、俺との距離を離そうとする。
だが、
「逃がすか!」
俺は空いた左手で男のコートを掴んだ。
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