*─‐誠‐─*

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  「戻りたいですか?新撰組に」 「もちろん。 あそこが私の居場所ですから 早く近藤さんや土方さんのために刀を振るいたい」 迷うことなく答える。 しかし彼の真っ直ぐな気持ちは逆に私の心を締め付けた。 その頃の新撰組は甲陽鎮撫隊と名を改め新政府軍との戦いに挑むが甲州勝沼の戦いに敗れ江戸へと帰還。 敗戦の一途を辿っていた。 そして試衛館時代からの同士、永倉さん原田さんも方向性の相違から新撰組を離れてしまっていた。 優しかった源さんは鳥羽伏見の戦いで戦死。局長も御陵衛士の残党の襲撃に合い銃弾を受け重傷だと聞いた。 山南さんも平助くんも みんな─‥いない あの頃の新撰組はもうない。 懐に閉まった文に手をあてる。 本当は今すぐにでもそのことを綴った文を彼に渡さなくてはならないのに、文を知ればきっと彼は悲しむ。 もう彼の悲しむ姿は見たくないのにどうして─‥? 文が届いて 丸二日が経っていた。  
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