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それを視た時、僕は初めて自分が何かを握っている事に気づいた。
――鍵、か?
それは確かに、鍵のように見えた。
――あの匣を開ける、鍵?
「・・・だれか、いるの?そこにだれかいるの?」
少女は、僕に気づいたらしい。
――ああ、居るよ。
「・・・おにい、ちゃん?その声はもしかして、わたしのおにいちゃん?」
――そうだよ。
勝手に、そう答えていた。僕に兄妹は居ないのだが。
「おにいちゃん・・・わたしをむかえにきてくれたんだ・・・」
――そうだよ。僕が持ってるこの鍵で、今から をそこから出してあげる。
僕の身体は、まるで僕の物ではなくなったように勝手に動き、匣に鍵を差し込もうとした。
が。
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