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ヴ・ゥ・ヴヴゥゥゥン
ふいに、重低音をともなった羽音が響きわたる。
三つの複眼に、胴体から伸びる六枚の薄羽。
貴族!
飛蝗<リーン>だ。
リーンの体を赤い微光が覆っている。
ファナは体が硬直するのを感じた。
恐怖に首筋のうぶ毛が逆立つ。
まずい。どうしてこんなところに…。紅…紅リーンだ!
貴族のなかでも女王に次ぐ権力をもつ紅の姫君!
ヴォォオン!
刹那、稲妻にも似た貴族の強制言語が、リラの額にあるアビラを貫いた。
白目をむき痙攣をやめ、ぐったりと腕の中で倒れこむリラ。
だがファナの瞳はリラを見つめることなく、前方の空中に浮かぶ巨大な生物に据えられていた。
まだ飛蝗の強制言語の余韻で大気が震えている。
ファナが後方へ後ずさりしようとした瞬間、刃のようなリーンの強制言語がファナに向かって放たれた。
絶対的な強制言語がファナのアビラを貫く。
*** サ・ガ・レ! ***
** 翼 モツ 娘 ヨ ***
*** 竜 ノ 巫女 ヲ ***
** ワラワ ニ ササゲヨ! ***
ファナは体が自分の意思とは無関係に動き出すのを感じた。
ふるえる翼指がリラを地面に置き、手足が勝手に後方へと下がっていく。
膝をつき、頭を地面にすりつける。
「…お、お待ちください…」
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