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*** 小サキ翼ヨ…オ前ハ何故? ***
見聞きしたことのない姫君の問いだった。
高貴なリーンは私たちに考えを聞くことはない。
何より相手は紅の姫君だ。
命令は下すが奴隷に対して問いを発することはないはずなのに。
姫君が困惑の舞踏のを止めた。
そう見えた瞬間、神速の動きで姫君が移動してきた。
リーン独特の香油を思わす香りが鼻先をかすめる。
ピラを一撃で屠る下顎が開いた。
ファナは死を覚悟した。
だが姫君の口から出てきたのはリラと同じく何本もの触手だった。
姫君の触手がファナの頭部を覆いつくす。
全身が凍りついたように硬直する。
首を刈り取られるのか?
そう思った次の瞬間には触手が姫の体へ戻っていった。
怒りが静まったのか、姫君の体は緑の燐光に輝きはじめている。
*** ソウダッタノカ…オマエハ… ***
言葉を発した後、姫君はこちらを向いたまま急速に後退しはじめた。
漆黒の闇へと姫君が小さくなり消えていく。
ファナは呆然とその場にいたまま動けなかった。
麻痺したアビラが回復してきたのか、遠くに部族の舞踊の声がアビラを通して聞こえてきた。
とにかくリラを連れて帰らないといけないな。
そう思い、ゆっくりと立ち上がる。
ふと夜空を見上げた。
巨大な天空には星々がちりばめられている。
二つの月、姉妹神バイスとフォスがそっとファナを見つめていた。
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