2・予兆

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 *** 小サキ翼ヨ…オ前ハ何故? ***  見聞きしたことのない姫君の問いだった。  高貴なリーンは私たちに考えを聞くことはない。  何より相手は紅の姫君だ。  命令は下すが奴隷に対して問いを発することはないはずなのに。  姫君が困惑の舞踏のを止めた。  そう見えた瞬間、神速の動きで姫君が移動してきた。  リーン独特の香油を思わす香りが鼻先をかすめる。  ピラを一撃で屠る下顎が開いた。  ファナは死を覚悟した。  だが姫君の口から出てきたのはリラと同じく何本もの触手だった。  姫君の触手がファナの頭部を覆いつくす。  全身が凍りついたように硬直する。  首を刈り取られるのか?  そう思った次の瞬間には触手が姫の体へ戻っていった。  怒りが静まったのか、姫君の体は緑の燐光に輝きはじめている。  *** ソウダッタノカ…オマエハ… ***  言葉を発した後、姫君はこちらを向いたまま急速に後退しはじめた。  漆黒の闇へと姫君が小さくなり消えていく。  ファナは呆然とその場にいたまま動けなかった。  麻痺したアビラが回復してきたのか、遠くに部族の舞踊の声がアビラを通して聞こえてきた。  とにかくリラを連れて帰らないといけないな。  そう思い、ゆっくりと立ち上がる。  ふと夜空を見上げた。  巨大な天空には星々がちりばめられている。  二つの月、姉妹神バイスとフォスがそっとファナを見つめていた。
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