3・戦士の誓い

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 我が部族、オーブのミトラまで帰ってきた。  飛蝗<リーン>の城でもあるミトラは、星々を背にその岩山のような威容を夜闇に溶かしている。  芳しい料理の香りと部族の者たちのざわめきが体を包みこみ、ファナは体から緊張が抜け出していくのを感じた。  食事が終わりに近づいたのか、巨大な焚き火の周囲では祝賀の踊りが始まっている。  いつもは寝てしまう時間なのに、小さな子供までもが走り回って踊りの輪に加わっていた。 「ファナ!」  二人分のそろった声がする。よく光る月のような目をした双子の女の子がファナに駆け寄る。  戦士バハの双子の妹、パナとビィだ。  二人は駆け寄ろうとしたが、ファナの後方に視線を向けて歩みを止めた。  巫女であり呪術師でもあるリラは部族の者から恐れられている。  振り返ると、リラがいつもの冷たい表情でこちらをみていた。 「疲れたからもう寝る」  リラの感情を読み取れない声がした。 「体はもう大丈夫?食事はいいの?」 「うん。もう歩けるし大丈夫だよ。騒がしいのは嫌いだからもう行くね」  リラはそう言うと歩み去ろうとした。  か細いリラの体が暗がりに消えていく。 「ファナ、もしも翼じゃなくて普通の手に交換できるとしたら…普通の両手が欲しい?」  急に立ち止まり、振り返ったリラが尋ねた。  暗闇の中、リラの頭部だけが浮かんでいるみたいだ。  「えっ?」  意味が分からず何も言えずにいるとリラが薄く笑った。 「ごめん。忘れて…おやすみ」  そう言うとリラはミトラの入り口へと消えていった。  両足に何かがしがみつくのを感じて下を向くと、パナとビィが心配そうな顔をしてファナを見上げていた。 「ファナ、大丈夫?」  パナより先に言葉を覚えたビィがファナに質問した。 「えっ?何が?」 「お母さんが…リラに近づくと呪いをかけられるから近づくなって…」  パナはというと、うまく言葉を綴れずにアビラから不安の感情を何度も発し続けている。 「うーん。確かにリラは変わっているけど、怖くはないよ。だから悪いことしなければ大丈夫!それにファナの方が強いかも!」  そう言ってファナは二人の姉妹を軽々と抱き上げた。  二人のはじけるような歓声があがる。  翼指に二人をのせて翼を広げ、すばやく回転する。    いつもの遊びに二人とも大喜びしている。 「よし!いくぞ!」  そう言って二人を抱えたまま踊りの輪に走り出した。
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