てめっ、この野郎っ!

10/10
前へ
/30ページ
次へ
どこまでも続いていると思った空が、今日の今だけは一部だけ切り取られてしまったようだ。 ……同じ学校の生徒3人が集っているこの神社だけが亜空間。 それは現世・来世・平行世界との関わりが切り離されたかの如く。 ……誰が? ……ココにいる全員が。 「悪いがココまでツケさせてもらったぞ」 「あのよ…オメー、なんか変。授業中に居眠りして叫んでたよな? アレから見せかけだけの顔でしか笑ってねーのはどーゆーこった?」 マロ、シンヤは真相を遠回しに聞こうとする。 伝わってるハズだった。 …いつも一緒にツルんでいる"さとお"ならば。 「……俺… ……消える……」 ボソッと何かを言ったさとおの顔は蒼白。 アタマの悪いヤツならば、この言葉の意味さえも考えなかっただろう。 二人が驚かないのは先刻の会話から、さとおが否人間という説が挙がったから。 ……突然、さとおは膝から地面へ崩れていく。 焦点が合わずに目も泳いでいる。 二人は距離を……保つ。 不用意に近付いてはいけない、と警笛をならしているのだろう。 約20㍍、一瞬では縮められない距離を維持する。 「オメーは…? さとおじゃねーな?」 シンヤは瞬動体制、マロは背後にて何かを呟き始める。 本気になった戦闘準備だ。 喧嘩ではなく、完全に相手を沈黙させるが如く放つ殺気…それだけで場の空気が凍る。 だが、さとおは膝をついたまま動かない。 「シンヤ…マロ……」 不意な声に少し戸惑う二人。 「っっ! "さとお"かっ!?」 「なんだコレ…俺の頭ん中ワケわかんねー……一体なんだかわからねー!」 突然さとおの体が光を放つ。 シンヤとマロはまだ距離を保っていた。 迂闊には踏み込めない。 「俺を…見るな……。 見てんじゃねぇ!!」 トゲトゲの黒い髪が風も無いのに激しく揺れる。 そして光が一層大きくなって、さとおを包み込む。 「よーやく戻ったのか!? 説明しろっ!一体なんなんだオメーは!?」 「……また…明日…」 「てめっ!この野郎っっ! なにを言ってやがるっ! このフザケた現象とテメー自身を説明しやがれっ!!」 一瞬目を開けられないほどの閃光。 その一瞬の間に、 さとおは消えた。 何も残らない、残さない、望むべくはカタチさえも。 もう… 声がもう届かない、神社は世界と繋がってしまった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加