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猫には記憶がない。大通りのパン屋の裏に好物のネズミが居ることや、
噴水の脇に寝ている浮浪者がこの間暴れて、からかってた子供をひっぱたいてたこと、
ソレを見ていい気味だと思ったこと
なんかは覚えているけど、
ある晩、裏通りの酒場の前で目覚める以前の記憶がまるで無い。
左腕の肘に絡みついている細い鎖、その先の安っぽい剣のキーホルダーが何かも
何でしっぽがちぎれて、先が醜く折れているかも
さっぱり解らない。
何で、その鍵尻尾を誇らしく感じ、自慢に思うのか、
解らなかった。
ただ、記憶を最古の物まで辿ると、この街で俺はみんなに嫌われてる。
それは、解った。
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