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 遠くのほうに、ほかとは違う黄金色の草むらを見つけた。その草むらはさらに遠くまで広がっており、そこにもやはり人がいる。僕はその方向に足を向けた。  僕はそこにいる、頭に手ぬぐいを巻いた老婆に声をかけた。といっても、ほとんどの人は手ぬぐいを巻いていた。  「何をしているのですか?」 今度ばかりは、本当に何をしているかわからなかった。  「米を収穫しておるんじゃよ。」  「米?ご飯になる、お米ですか?」  「そうじゃよ。何せ実りの秋じゃ。」  春にだって米はある。しかし、こうやって収穫するものだとは知らなかった。少なくとも、春には米の収穫はない。  「お前さん秋は初めてかい。これが稲穂じゃよ。米の重みで頭が垂れとる。手伝ってみるかい?」  「いえ、まだ旅の途中なので。」  「そうかい、それは残念じゃの。食べても行かないかい?うちの孫なんかも、食欲の秋だと言うて、家で待っとるわい。旬の栗や胡桃なんかもあるよ?」  「いえ、せっかくですがそれも遠慮しておきます。」  「そうかい。何も遠慮することなどありゃせんのに…。それじゃ、ゆっくりできる時にまたおいで。」  「ありがとうございます。」  僕は老婆とも別れ、再び歩き始めた。辺りには米のほかにも、木の実を収穫している人や、魚を釣っている人もいた。
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