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キッチンについた健治は、たいした期待もせずに冷蔵庫の扉を開けた。棚の奥まで覗いてはみたが、案の定めぼしいものは何もない。目に入るのは大量の発泡酒といくつかのつまみ、後は扉側に置かれた卵や牛乳くらいである。ものはあるにせよ、こんな嗜好品しか入っていない冷蔵庫は空っぽであることと大差なかった。
冷蔵庫の扉を閉め、キッチンをぐるりと見渡してみた健治の目に、カウンターの上に置かれたボウルが入ってきた。近寄って中を覗き込むと、そこには少量のポテトサラダが入っている。昨日の残り物のようだった。なぜこれが冷蔵庫に入っていないのか甚だ疑問だったが、そんなことは気にしていられず、健治はかかっていたラップを破り捨ててその場でそれを食べ始めた。
なま温かいポテトサラダを一口食べるたびに、これを冷蔵庫にいれなかった美代が恨めしかった。
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