1章

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         「今日未明、○○県の山中で遺体が発見され、間もなく死亡が確認されました。近くに落ちていた遺留品などから、亡くなったのは県内在住のOL・藤倉美与子さんだと……」      あれから少しして多少まどろみかけていた健治は、わけもよくわからぬまま体を前に起こした。テレビに目をやるが、ニュースは既に次のものへと変わってしまっている。意識がまだはっきりと定まらずにいた。      たった今、テレビの中のアナウンサーが健治の母の名前を口にした気がしたのだ。なぜか「死亡」という単語は強く頭に残っている。      いまだに半分寝ている脳を揺り起こし、健治は辺りに自分の携帯を探し始めた。しかし、床に散乱しているものを乱暴にどかしながら探しているものの一向に見つかる気配はない。焦燥感ばかりが次第に募っていく。その時、インターホンのベルが静寂を破って鳴り響いた。        
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