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結果から言うと、健治の母は死んでなどいなかった。健治の母こと美代は、煎餅をぱりぱりとほおばりながら今こうしてテレビの前に居座っている。
「寝ながら食べるとさ、牛になるってよく言うじゃん」
その隣で座っていた健治がぽつりとぼやく。
「うんうん」
美代がだるそうに相づちを打った。
「おふくろはさ、まだ牛になんないの?」
「何よそれ。さっきの勘違いの腹いせ?」
「そんなのじゃないけどさぁ」
「そんなのにしか見えないけどなぁ」
寝ぼけていたとはいえ、「みよこ」と「みよ」を見事に聞き間違え真剣に美代の安否を心配していた健治は、むすっとしたままリビングを後にした。
自分の部屋に戻った健治は、ベッドの上にドスンと倒れ込み、枕に顔をうずめた。これから一週間は、美代に今回のことをいじられる気がした。あの母は、そういう母なのだ。
「あ……」
鞄を放り投げたまま忘れていたことに気づき、健治はしぶしぶリビングに向かう。
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