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「健治、晩飯食べてないでしょ? 今なんか適当に作るからおとなしくテレビでも……」
――いかんせん、タイミングが悪すぎた。健治が鞄を取るために寝転がっている美代を跨いだのと、その美代が起きあがったのとが絶妙な具合に重なり、健治は美代の背中に持ち上げられる形で後ろに倒れていった。鈍い音が家中に響き渡る。
「何やってんのさ、あんたは」
呆れた顔で美代が健治を見下ろす。
「おふくろも悪いだろ、今のは」
美代を見上げる形で、健治が愚痴をこぼした。
「どっちが悪い?」
「……俺です」
健治はしゅんと視線を逸らす。
「わかってるじゃん。じゃあ飯作るからその間片づけでもしといて」
テレビ鑑賞が部屋の片づけへと変わってしまった。それでも文句など言おうにも言えず、健治はおとなしく部屋を片づけ始めた。
十分後、足の踏み場もなかったリビングはとりあえずのびのびと横たわることができる程度に片づいたのだが、この状態がいつまで続くかを考えると、健治は無性にやるせなくなった。
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