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その笑顔に頬を赤らめつつ彼――リクヤは、よかった~と、安堵の息をつく。
そこで、彼はとある重大な事に気付いた。
名前を聞いていない。
少年は名乗ったが女性はまだだ。
「あの…名前、貴女の名前を教えてください。まだ、聞いてませんから」
――しかし、女性は何も言わず、立ち尽くしていた。
「え、えっと……」
「……無いんだ」
小さく呟く。
「え?」
今度ははっきりと響く。
「私には……他の者からの呼称が無いんだ。人からは災厄と呼ばれ、他の竜からは黒龍と畏怖された」
視線を下に向け苦悶の表情を浮かべる。
「あ……その…、ごめんなさい…」
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