『板垣の場合』

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板垣義治は小太り眼鏡だ。 眼鏡は、視力が低いから。小太りなのはよく食べるからだ。 が、実は肥満に見える板垣だが、体脂肪率は平均値よりも低い。 脂肪の内側には、太い筋肉の束が隠されている。 特に足腰に。 だから足が速いのだ。が、中学時代の監督は板垣に関して『速さよりも早さに優れる』と評していた。 かつてプロ野球でゴールデングラブ賞を何度も受賞した名選手は、 『ゴロは足で捕って足で投げる』 と語っていた。 正確な最初の一歩が確実な捕球姿勢を作り、その後の足運びが正確なスローイングを生み出す。 板垣はそれが出来ている。 打者の構えと立ち位置、投手の配球から大体の打球の方向を前もって予測、逆をつかれようとも冷静さ――というより想像力豊かな思考――で素早く反応する。 考え方、行動、能力。それらが天然な性格によって均衡を保っている。 面白い生徒だった。 将来は間違いなく大物に――野球に限らずなる。 そう思わせる何かが板垣にはあった。 そして板垣は滑川学園に危なげなく進学。 そこで、後々まで腐れ縁が続くことになる相棒、犬飼と出会うのであった。 入学からしばらくは、犬飼から敬遠されていたのだが・・・。
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