343人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
板垣義治は小太り眼鏡だ。
眼鏡は、視力が低いから。小太りなのはよく食べるからだ。
が、実は肥満に見える板垣だが、体脂肪率は平均値よりも低い。
脂肪の内側には、太い筋肉の束が隠されている。
特に足腰に。
だから足が速いのだ。が、中学時代の監督は板垣に関して『速さよりも早さに優れる』と評していた。
かつてプロ野球でゴールデングラブ賞を何度も受賞した名選手は、
『ゴロは足で捕って足で投げる』
と語っていた。
正確な最初の一歩が確実な捕球姿勢を作り、その後の足運びが正確なスローイングを生み出す。
板垣はそれが出来ている。
打者の構えと立ち位置、投手の配球から大体の打球の方向を前もって予測、逆をつかれようとも冷静さ――というより想像力豊かな思考――で素早く反応する。
考え方、行動、能力。それらが天然な性格によって均衡を保っている。
面白い生徒だった。
将来は間違いなく大物に――野球に限らずなる。
そう思わせる何かが板垣にはあった。
そして板垣は滑川学園に危なげなく進学。
そこで、後々まで腐れ縁が続くことになる相棒、犬飼と出会うのであった。
入学からしばらくは、犬飼から敬遠されていたのだが・・・。
最初のコメントを投稿しよう!