『犬飼の場合』

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犬飼は、背が高い反面、線が細い。 本人がそれを大きく自覚しており、昔から筋肉をつけようと食は太かったが、太くはならなかった。 両親ともに細いので、遺伝による体質が原因だろう。 貧弱な印象が強いが決してそんなことはない。しなやかな筋肉がついている。 天は、求めるものを与えてくれない。不合理なものだ。 背が高いことは嬉しいことだが、もっと筋肉が欲しかった・・・。 足も特別速いということはない。肩が際立って強いこともない。 だから、中学時代は徹底して一つ一つのプレイの“早さ”を研いた。 早さで速さをカバーする。 その集大成が緻密な情報野球だ。 徹底して無駄を省き、必要なもののみを身につける。 努力は自分を裏切らない。 『他人が自分を裏切ろうとも、自分は自分を裏切らない』 過去に深く負った目に見えない傷は、犬飼を追い詰め、同時に悟らせた。
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