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練習試合当日。
犬飼は一番にグラウンド入りしていた。
嫌な予感で眠れないかと思ったが、普段からの規則正しい生活リズムが体に染み付いており、しっかりと眠れてしまった。
おかげで体調は不本意にも万全だ。
家でじっとしているのも落ち着かないので試合前に軽く汗を流して精神を集中させて――
「おお。早いな犬飼」
「・・・」
板垣の登場により犬飼の精神集中タイム、5分で終了。
その10分後、二人はキャッチボールをしていた。
何で、こんな事になるのか。
「犬飼は昨日眠れた? 俺はワクワクしちまってあまり寝れなかったよ」
「何時間寝たんだ?」
「7時間」
充分だろ。
「・・・お前、普段は何時間寝ているんだ?」
「9時間?」
小学生かお前は。
ちなみに犬飼の睡眠時間は毎日6時間。
「そんなことよりも浮かない顔だな。犬飼、もしかして今日の試合乗り気じゃなかったりする?」
「・・・まぁな」
こいつは、何でこんなにも鋭いんだ。
「話せない位深刻な内容か? ならこれ以上は聞かないよ」
「いや、下らない話さ」
犬飼は中学時代の事を語る。
これまでで一番饒舌に。
自分がどれだけ滑稽で、ピエロだったか。
「・・・下らない話だっただろ? 臆病者を笑ってくれ」
静かに聞いていた板垣。僅かな沈黙を経て、板垣がゆっくりと口を開いた。
「・・・で?」
一文字。
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