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板垣義治。
犬飼康。
二人とも、その偏差値の高さで知られる名門滑川学園に通っている。
しかも所属する部活は同じ野球部。
この二人、見た目も性格も完全に正反対であった。
小太りで眼鏡をかけた楽観的で明るい板垣義治。
背が高く、痩身で冷静沈着な犬飼康。
二人の共通点は二つ。
野球部所属であることと、
イニシャルが同じ『YI』であることだ。
この学校に通う生徒は、大きく二つに大別される。
天才型か秀才型かだ。
板垣は、その性格からは想像出来ないが、天才型に分類される。
特別勉強が好きでもないが、嫌いでもない。記憶力が非常に高く要領も良い。教科書や参考書等は二、三回程目を通せば十分内容を理解できた。
対する犬飼は秀才型に分類された。
日頃から予習復習を欠かさず、何度も反復することで学力を向上させていった。教科書や参考書は使い込まれ、彼の努力を物語るようにボロボロになっていた。
そんな二人が初めて出会ったのは入学式の日。
クラスを確認に行った時だ。
「・・・」
無言でクラスを確認する犬飼。
(出席番号は、三番か)
出席番号は、あいうえお順である場合が多く、滑川もそうだった。
『い』から始まる犬飼は必然的に前になる。
確認するべきことは確認した。後は教室に入って入学式まで待――
「何だよ、『あ』がいるのか。ちぇっ、出席番号一番を狙ってたのに、二番かよ。幸先悪いな」
一際大きな声が『隣』から響いてきた。
見ると犬飼よりも頭一つ分背の低い小太りで眼鏡をかけた男子がそこにいた。
不満げな言葉とは裏腹に、どこか楽しげだ。
(・・・二番と言っていたな)
自分の名前の一つ上を見る。
『板垣義治』
こいつか。
クラスメイトのようだが、自分とはまるでタイプが異なる。性格も完全に違う。
賭けてもいい。
こいつとは、絶対に合わないと。
無言で、名前しか知らないクラスメイトに対し、そう結論付けた。
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