『後日談』

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「一年なんてあっという間だな」 「お前は変わらないな、板垣」 進級を控えても相変わらずの光景。 「でも、悔しいよな。結局甲子園の“こ”の字も見えないままなんて」 「人材も環境も根本から違うからな。だが、野手――特に守備に限ればそこそこイケると思う。後は――」 「投手力だろ?」 「そうだ。強豪校の打線と真っ向から勝負出来る投手力が」 「ムリムリ。こんな進学校にそんな逸材がくるはずがないって。体力作りの為に、みたいな連中が集まって来るって」 「まるで、自分が変わり者と主張しているように聞こえるぞ」 「じゃあ、コンビを組んでいるお前も変わり者だな」 「否定は出来ない、な」 犬飼は、あわよくば甲子園出場を狙っている。 身体能力と技術では勝てなくても、知略を駆使すればいつかは。 強豪校のセレクションを受けた経験のあるとある先輩から聞いた話だと、 「才能に恵まれた人の集まりだろうからな・・・」 「気張っても仕方ないって。気楽にやろうぜ」 「・・・」 この気楽さが時にストレスを感じ、羨ましくも思う。 今日は入学式。新入生が滑川学園にやってくる。 当然各部に新入部員が入って――正確には希望者が来る――くる日だ。 「な? 俺が言った通り、本格派な体格の奴はいないだろ?」 「何故そこを喜ぶ。悲観しろとは言わないが、少しは残念だという気持ちを持て」 「お前が俺の分まで残念がってくれればOKだろ?」 「・・・」 肩の力が抜けてしまう。 この年、滑川学園野球部史上に残る転機が訪れることになるのだが、それはまだ少し先の話だ。 YIコンビの真逆のコンビネーションも、まだまだ始まったばかりだ。 真逆のコンビネーション end
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