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素っ気ない犬飼とそろを気にする様子もなく一方的に絡む板垣。
まるで、気心の知れた幼なじみのようにも見えるが、初めて会話をしたのは今日が初日。
本当に正反対だ。
板垣が野球部に入るつもりならば、部活でも顔を合わせるようになるだろう。
しかも、一緒にレギュラーにでもなってしまいでもすれば――
やけに現実味のある想像だ。
リアル過ぎて笑えない。
だが、
(不思議と、しつこくて喧しい奴だが、今のところは嫌な奴ではない)
単純に、裏表がないだけなのだろう。
そう考えると、不思議と『こいつとやっていける』という風に思わされてしまう。
(何と言うか、狸にでも化かされた感じでもあるな)
だとしたら自分は狐だろう。
目的の為には、何処までも残酷になれる所なんて、正にそれだ。
どうせ高校生活の間だけの付き合い。
卒業して何年後かには「そういえばそんな奴がいたな」と思い出話で片付けられる程度の関係でしかない。
余計な揉め事を起こして厄介なことになるくらいなら、こいつに相づちを打っておく方が気楽だ。
“そう。この時の俺は、そんなストイックで腹黒い奴だった”
染々と思う。
『こいつとの出会いは、偶然だったのか必然だったのか』
少なくとも、自分の利益――プラスになるようにする事にしか興味が無かった自分が変わったのは、間違いなくこいつとの出会いがきっかけだ。
未だに何を考えているか理解に苦しむ時もあるが。
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