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野球部に入り、犬飼の疑念は増した。
板垣はその小太りな体格にも関わらず、俊敏だった。
これなら中学時代一番を任されていたのも納得だ。
加えて人を虚を突くのが上手く、俊敏さと合わさって盗塁成功に活かしている。
硬球にもすぐに慣れ、セカンドてしてチーム一の守備範囲を披露した。慣れるまで一週間近くかかった自分とは違って高いセンスを誇っていた。
だが、一番犬飼を驚かせたのは打撃に置いて『四死球もシングルヒットも塁に出れれば結果同じじゃん』と完全に達観していることだった。
この年齢ならば、長打に魅力を感じるはずだ。だが、板垣は完全に割り切っているのだ。
どんな形でも出塁し、常に先の塁を狙う。
(高校入学したばかりでここまでここまでプレイスタイルが確立させているのも珍しい)
そして、
「なあ、犬飼。考えて見たら、俺らってイニシャル同じじゃね?」
妙に俺に付きまとってくるのだ。
俺は、この時自分のプレイスタイルに確信を持てず、中学よりも厳しい高校の練習についていくのに精一杯だった。板垣は、キツい練習すら楽しんでいるようだ。
本当に、何を考えているのか読めない奴だ。
正直、羨ましいのに加えてうざったい。
しかし、現実とは無情なもので、クラスでも部内でも、俺と板垣がコンビとして認識されつつあった。
俺にとっては、非常に不本意なことなのだが・・・。
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