真逆のコンビネーション『出会い』

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『YIコンビ』 それが俺と板垣のコンビ名。 考えたのは板垣本人。 何かとハイテンションな奴だ。 俺はというと、完全に奴に振り回されっぱなし。 だが、奴に一つだけ弱点を見つけた。 これまた俺と正反対。 板垣は『嘘がつけない』のだ。 というよりも、嘘が極端に下手だ。 言いたいことを本音で口にしてしまう。 一年生にしてそれはマイナスでしかない。 上級生に対しても本音を言ってしまう。 誤魔化せば良いものを、素直というか、ばか正直な奴だ。 そしてそのとばっちりは『コンビ』の俺にも来る訳だ。 理不尽だ。 逆に俺は本音を常に隠しているので怒らせるようなことは少ない。 怒られるのは大半が板垣のフォローで、奴が余計な一言を言うからだった。 被害者の気持ちを少しは理解してもらいたいものだ。 それでいて野球――二塁手の守備は上級生よりも上手いのだから理不尽だ。 まあ、出会ってしまったものは仕方がない。 どうせ高校の間だけの関係だ。 三年我慢すればいい。 進学先が別になるように気を付けなければな。 そんな時、練習試合の話が持ち上がってきた。 新しいメンバーを加えた連係プレイ等を試合の中で見るそうだ。 一年生でも出場機会はある。 この試合が、後々まで続く俺たちの本当のスタートだったのだ。
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