じいさんのオルゴール

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 ここら辺で一番の金持ちが死んだ。  わがままで有名なじいさんで近所付き合いもなく、一人暮らしだったために死後数週間発見されなかったそうだ。確かに最近見ないとは思っていたが、まさか死んでいるとはな。評判こそよくなかったが、意外に世話好きな面もあって、俺みたいなホームレスなら、誰でも一度は何かしら世話になっていた。  そんなわけでホームレスには人気があり、何度か仲良さげに話しているのを見たが、それもじいさんの評判を下げる一因だったのかもな。  そんなじいさんだから、持ち主のいない間の何日か家に泊まるぐらい許してくれるだろう。塀に囲まれた洋館のような家はどこか不気味で、近所の子供らが近寄りたくない気持ちもよく分かったが、近頃物騒になった公園で寝るよりは怖くない。  幸いにして茂みに隠れた塀の穴はそのままだったから、何とか中にも入れた。塀を抜ければ洋館のような家に入るのは簡単だ。俺は昼は外で仕事、夜は洋館に戻って寝る、という生活を何日か繰り返した。
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