1人が本棚に入れています
本棚に追加
洋館に住み着いて4日目、俺はひどい頭痛とだるさで寝込んでしまっていた。どうやら風邪を引いたみたいだ。寝室に使っていた部屋は真昼でも薄暗く、家の中は静か過ぎて、シーンという音が聞こえるようだ。
そろそろ腹が減ってきたころだったから、一時くらいだっただろうか。突然家の中に何かの音が響いた。ここに届く音は小さかったが、実際にはかなりの音量で鳴っているのではないだろうか。俺は無性にその音が気になり、重い体を起こして部屋を出た。
どうやら音は広間で鳴っているようだ。そこに近づくほど音は大きくなっていく。次第にはっきりしていく音は、何かの音楽のようだ。俺は大広間の扉を開け、中に足を踏み入れた。
その途端、オルゴールが奏でる実に荘厳で美しい音楽が、大音量で重い体を突き抜けていった。俺がその部屋に入ったときにはもう終盤になっていたが、俺は最後まで息をするのも忘れて聞き入った。数分間の音楽が鳴り止み、再び怖いくらいの静寂が訪れると、俺の頭はやっとその機能を取り戻した。
そして俺の頭に、ここの持ち主だったじいさんの顔が浮かんだ。そのとき俺は確信した。この音楽は、あのじいさんのために作られたに違いない。あのじいさんはきっと毎日この大広間で、あの音楽を聴いていたんだろう。俺にはじいさんが悠々とここに座って、さも当然のようにオルゴールの音色に包まれている姿が、まるで写真でも見ているかのように想像出来た。
最初のコメントを投稿しよう!