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クヌートの全身が一瞬にして臨戦態勢へと変わる。
そして次の瞬間、歴戦の戦士とは思えぬ動揺を見せ、腋と背中に冷たい汗が噴き出た。
――このお声は
「何者だ! 姿を現せ!」
馬の手綱を強く引き、周囲をせわしなく見渡すワーカムの叫びに、まだ若い男のものらしい声が、哄笑を響かせた。
「ワーカム。相変わらずよく吠える」
名を呼ばれ、ワーカムは驚いて口を閉ざした。
若い男の声は、高い木々の幹に反射するように響き、所在がわからないままだった。
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