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「おや。こんな危険な森に女がいる」
おかしそうに笑い響く声を、じっとただ聞いていたユーリアは、不意に顔を上げて斜め前の木の枝を指さした。
「あそこだ」
全員がユーリアの示した方向へたいまつを掲げる。
そこにはただ夜の闇に包まれた木々の枝があるだけだった。
しかしユーリアは金と黒の瞳を鋭くすがめ、その一点から視線を外さない。
「これはまた……異形の相だな」
おかしそうな声が響いたかと思うと、ぽっ、ぽっとその枝の周囲に青白い狐火が点った。
やがて照らし出された木の枝には、はたして男が座っていた。
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