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帝都の一角にある喫茶『銀星館』
そこにいる貘、蛭孤に悪夢から解放されるために一人の少年がやってきた。
彼の名は佑汰。まだ幼い顔立ちをしている。年齢は12歳前後だろう
―――カランカラン―
扉が開く音に霧霞(みづき)
は反応する
「いらっしゃい」
佑汰は小さな声で尋ねた
「貘の…蛭孤さんがいらっしゃるのは…ここでしょうか」
霧霞は微笑んだ
「あそこにいるわ」
佑汰は産まれたてのうまのようなあしどりでよたよたと歩いていく
「僕を悪夢から解放させて下さい…」
蛭孤はニヤリと笑う
「どんな夢をみるのかな」
「はい…水の泡のような夢です」
「あわ…?」
「はい」
佑汰は説明をはじめた
「僕が水の中にいるのですが、どうもふわふわと足元がおぼつかず、波に酔ったような感じになるのです。あがこうにも、何か壁にあたり、身動きも取れません…そして最後には硬いものの上に叩きつけられてまた、泡のように…」
「消えるのかな?」
「その通りにございます」
蛭孤は立ち上がり杖を持った
「成る程。だいたいわかった」
杖を佑汰に向けていつものように呟いた
「さぁ 眠れ しばし現にお別れだ」
佑汰を睡魔が襲った
―――水の中だ―――
「これは、僕の夢のようです」
蛭孤はまた、ニヤリと笑う
「当然だ僕はいま、君を夢の中に誘った」
佑汰は走り出したその足はとてもはやい。
(速いな…)
蛭孤はそう考えていた。その時、佑汰は何かに跳ね返る
「やっぱり。どうしても跳ね返るんだ…」
「出口はないのかな?」
蛭孤は壁らしき物があるところに手を触れて歩き出した
(軟らかいんだ)
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