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「いや、勝ったのは運じゃ」と三郎右衛門も久しぶりに爽快な汗を流し気持ちよさそうに笑った。
「おぬし、名はなんと申す?」
「ワシは三郎右衛門。飛騨国の生まれじゃ」
「ほぅ‥飛騨国といえば姉小路殿の治める国。それがどうして遠江に?」
「なに、近隣諸国の情勢から徳川家康殿が天下を‥おっとっと」危うくお春から聞いた話を喋ってしまうところだった、と三郎右衛門は口を濁し
「徳川殿が武田と戦うらしい‥と聞いたので幼なじみと徳川殿の助っ人をしよう、とやってきたのじゃ」
「ふぁふぁふぁ‥徳川家は三河武士の頑固者揃いじゃ。なかなか余所者は入り込めぬ」
「そうなのじゃ。ワシらも本多忠勝殿に門前払いをくらったわ」
「それからどうした」
「それから足軽の親方らしき侍に頼み込み、足軽の末席に名を連ねたのだが、三方が原で徳川軍は大敗。ワシらも一時的に避難した、というわけじゃ」
「フム。するとおぬしは徳川家に仕官するのが望みか?」
「さよう」
「それならワシが紹介状を書いてやろう」
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