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好きなだけ‥か。三郎右衛門は3個分の代金として3朱銀を箱の中に入れた。 「宍戸殿、余計なお世話かもしれんのですが、こんなことで商売が成り立つのですか?」 「はっはっは、おぬしは心配せずともよい。ワシはもともとこういった手作業が好きでな、例えば農具の鎌があるじゃろう。この鎌というものは武器にもなる。‥が、このままでは武器としては使えぬ‥なにかしら一工夫が必要じゃ‥とか考えながら一日を過ごすのが楽しみなのじゃ。手作業としての錠前作りも楽しみとしてやればさほど苦痛にも思わぬ。ワシの作った錠前はその辺の盗人には決してやぶれぬ。おぬしも錠前の鍵をなくすなよ」 と上機嫌で話す。三郎右衛門は話のついでとみせて聞いてみた。 「わかり申した。ときに宍戸殿、この街道沿いに越前屋という刃物屋がありますな」 「む?ワシはこの家からほとんど出ることは無いのじゃが、その店がどうした?」 と何も知る様子はない。「あぁ‥いや、ちょっと大きな店構えだったので気になっただけでござる」と取り繕った。
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