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いつの間に現れたのか、リウォードの向かいには教会の主である老牧師が腰かけていた。
彼は特に驚いた様子もなく、静かに本を閉じると牧師を真っ直ぐに見つめ返す。
「はい、まだ未知の部分も少々ありますが、大まかな事は把握できました。ありがとうございます」
「礼には及ばんよ。なに、家だと思っていつでも勝手に使うといい。お前さんは嫌かもしれんがの」
そう言うと、牧師は目尻のシワを一層深く刻み穏やかに笑った。
その言葉にリウォードは僅かだが困ったような、申しわけなさそうな表情を浮かべると静かに立ち上がった。
「俺にとってここは大切な場所ですよ。だからこそ迷惑をかけたくないんです。それに・・・」
彼は一息つくと呆れたように笑った。
「目を放すと問題ばかり起こす、教会嫌いな馬鹿が俺の帰りを待っているので、ゆっくりしているわけにもいけません」
少年の思わぬ笑顔に一瞬驚いたような顔をした牧師だが、すぐにまたいつもの笑みを浮かべると自分も椅子から立ち上がる。
「・・・そうか。それは残念じゃのう。まぁ、困ったことがあればいつでも来なさい。無くても顔を見せるぐらいするようにな。では、失礼」
「はい、ありがとうございました。失礼します」
牧師が立ち去るのを静かに見守ると、リウォードは机に積んである本を片付け始めた。
全てを本棚に戻すと受付にいるシスターに礼を言い、待ちぼうけているであろうヴァンの元へと駆け出した。
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