第二話 過去と苦痛

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彼女は俺と…―いや、俺だけじゃない。 自分以外の全ての人間と深く関わらないようにしている。 何故そうするのか、俺には分からない。 過去に何があったのか、俺は何も知らない。 研究者に捕まることもなく、能力者としては当たり前の人生をおくってきた俺には、同じ能力者の彼女に話すような過去はない。 でも、彼女には? 俺にはなくても、彼女にはあるのだろう。 あんなにも強い彼女が、自分の人生を狂わせてしまうほどの何か。 恐ろしい、恐ろしい、闇に包まれた何かが。 その闇が、こんなにも突然、明かされるなんて。 「貴女のお名前は?」 黒いスーツに身を包んだ若い男が、感情の篭っていない声色で白雪に尋ねた。 「……貴方は誰」 警戒して体を強張らせ、白雪は男の質問に答えずに、尋ねた。 「サトリと申します。写っているのは貴女ですね」 そう言ってサトリが胸ポケットから取り出したのは、一枚の写真だった。 「…!」 写真を目にし、白雪は愕然とした。 今までにない激しい動揺。 写真に写っていたのは、紛れもなく、幼い頃の自分。 だが、その写真は存在するはずがなかった。 自分が写真に写されたのは過去に一度きりであり、一枚しかない。その一枚は自分が持っているのだから。 「貴女ですね」 サトリは同じ質問を重ねる。 白雪は何も答えない。 しかし、その無言がサトリには肯定の意として取られた。 「巧馬(タクマ)様がお会いしたいそうです。来て頂けますか」 “巧馬” サトリがその名前を口にした途端、白雪の顔から血の気が引いていった。 一歩、一歩と後退る。
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