62人が本棚に入れています
本棚に追加
/232ページ
この世界には2種類の人間がいる。
ごく普通の人間と、チカラを持つ人間。
火を操るチカラ、変身するチカラ。
チカラを持つ人間を研究し、実験しようとする者までいる。普通の人間に対してチカラを使えば即死刑。そんな法まで作られた。
兵器や凶器、化け物など、様々な呼ばれ方があり、最も多く呼ばれているのが、どんな由来があってか、『死神の牙』だった。
決して人だと認められることのない存在名。
そして、チカラを持つ人間はその存在名を嫌い、自分達のことを能力者と呼ぶ。
ただチカラを持っているだけの人間、そんな意味で。
普通の人並みの幸せを得るには、自分がチカラを持っている方であることを、上手く隠して生きて行かなければならない。
誰もがチカラを持って生まれたことを嘆いた。それに反し、ただ一人、死神の牙であることを拒絶しない男がいた。
彼は偽りの人柄の下に、冷酷で残虐な心を持っている。
誰も彼の本性には気付かない。
……彼女以外は。
誰も気付かないはずの彼の本性を、一瞬で見抜いてしまった少女。
善か悪か。危険か安全か。彼女はその人その人の本質を敏感に感じ取る。
それがいけなかった。
彼女が彼女であったが故に、惨劇は起きた。
彼女の未来を捩曲げてしまうほどの、深い深い闇が生まれた。
最初のコメントを投稿しよう!