序章

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この世界には2種類の人間がいる。 ごく普通の人間と、チカラを持つ人間。 火を操るチカラ、変身するチカラ。 チカラを持つ人間を研究し、実験しようとする者までいる。普通の人間に対してチカラを使えば即死刑。そんな法まで作られた。 兵器や凶器、化け物など、様々な呼ばれ方があり、最も多く呼ばれているのが、どんな由来があってか、『死神の牙』だった。 決して人だと認められることのない存在名。 そして、チカラを持つ人間はその存在名を嫌い、自分達のことを能力者と呼ぶ。 ただチカラを持っているだけの人間、そんな意味で。 普通の人並みの幸せを得るには、自分がチカラを持っている方であることを、上手く隠して生きて行かなければならない。 誰もがチカラを持って生まれたことを嘆いた。それに反し、ただ一人、死神の牙であることを拒絶しない男がいた。 彼は偽りの人柄の下に、冷酷で残虐な心を持っている。 誰も彼の本性には気付かない。 ……彼女以外は。 誰も気付かないはずの彼の本性を、一瞬で見抜いてしまった少女。 善か悪か。危険か安全か。彼女はその人その人の本質を敏感に感じ取る。 それがいけなかった。 彼女が彼女であったが故に、惨劇は起きた。 彼女の未来を捩曲げてしまうほどの、深い深い闇が生まれた。
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