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『俺は人間の恐怖や憎しみに歪んだ目を見るのが楽しいんだ。恐怖や悲しみを隠しきれなくなった目が。だから君の表情はとても好きだったんだ』
心臓が大きく脈打ち、呼吸を上手くさせてくれない。
『煌呀を殺すことで、その瞳はさらに黒く深い闇色に染まった』
満足そうに笑う巧馬。
―――…そんな…ことで?
白雪は心の中で呟いた。その呟きは黒鋭にも伝わっていた。
『君には自由をあげるよ。でも、いつかまた会う時が来るよ。その時はもしかしたら…君を捕まえてしまうかもね』
白雪の気持ちなんて一切関係なかった。
『逃げられるなんて思わないでね』
彼は微笑んで木々の奥へと消えて行った。
白雪の中で、何かがヒビ割れていく音がする。
―――…ポツッ……
涙を誘うように、無情な雨が降り出した。
コップの水を零したように、白雪の瞳からも、透明な滴が流れる。
雨音が響く中、三体の亡骸と、小さな少女が残された。
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