第三話 選択と思惑

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白雪は無言。 「他の奴等ならともかく、俺にそんな気遣いは無用だよ」 彼女の無言をYESと受け取って、彼は話し始めた。 「俺は君が思っているよりずっと強い。殺されるつもりはない。だから君から離れる理由はない」 白雪が一番恐れている自分と関わりを持った人間の死。その心配はないというのが中心の彼の話。 白雪は俯いたまま首を横に振った。 「いくら貴方が強くても、命を狙われることに変わりはない。貴方が私の犠牲になる必要はないの」 犠牲の犠牲なんて無意味。 ましてや、出会って間もない彼がそこまでする必要などかけらもない。 こんな自分の為に犠牲になろうとしてくれる優しい彼を、苦しませてはいけない。 「犠牲?…俺が?まさか、君も俺が優しいなんて思っているのかい」 黒鋭はやれやれとうなだれ、椅子に腰掛けて足を組んだ。 白雪は横目で彼を見遣る。 「サトリって男にも言ったけど、俺は優しい人間じゃない。研究所はただ気に入らないから潰してただけだし、生まれてこのかた誰かに優しくしたこと、しようと思ったことなんてなかったんだから」 「…なら…どうして私にはあんなに…」 顔を上げ、不思議そうに黒鋭を見つめる白雪。 彼は優しかった。気遣かってくれて。サトリから守ってくれて。それのどこが優しくないと言える? 「他人なんてどうでもいいって思っていたんだ。だから人に優しくするとかがなかったし、できなかった」 彼女と理由は違えど、自分も一人で生きてきた。 元々一人が好きだったことで、孤独感や寂しさなんて微塵もなかった。一匹狼で、一人で自由に生きているのが楽しかった。 だけど、いつからか何かが足りないと思うようになった。
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