62人が本棚に入れています
本棚に追加
/232ページ
「フフ…面白い子だね。あの目…相当あの子に執着してる」
新しい玩具を見つけたと喜ぶか…。
彼は楽し気に失笑する。
その彼があまりにも悍ましくて、彼に一生苦しめられるであろう白雪が、哀れに思えてきた。
彼からすれば黒鋭の想いは執着心。
「もう暫く時間を置けば、更に面白い展開になりそうだな」
彼にとって、この世に生ける人間は、自分が楽しむ為の道具でしかない。
その中のお気に入りが白雪だった…。
「あの子を連れて来るのはまたでいい。下がれ」
「はい。…巧馬様」
深々と頭を下げ、サトリは襖を閉めて来た道を戻った。
同じ『死神の牙』と恐れられている能力者の彼女をも、玩具同然に扱う巧馬。
彼は間違いなく、死神の牙なんてレベルの存在ではなかった。
ただの人間とも、死神の牙とも違う。人の皮を被った、本当の化け物。
人の姿をした悪魔。
白雪、黒鋭。二人は平穏な時間を生きられるのか。
チカラを持って生を受けたからには、穏やかな時間を脅かすのは巧馬だけとは限らない。
この理不尽な世の中だ。汚れた人間が、二人を狙うかもしれない。
もしくは、もっと別の何かが、二人の間を裂こうとするかもしれない。
死神の牙、轢には、苦難が次々と降り懸かってくるのだから。
どんなに懇願しても、さけることのできない宿命。
それを背負って、彼等は生きていかなければならないのだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!