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「なんじゃ、もう戻ってしまったのか」
さも残念そうにボヤくシルフィーデが、アーサーとは反対側から歩いてきてロードの背中に抱き着いた。
「ううむ、やはり大きいと抱き心地があまり良くないのう……」
「……抱き心地云々の前に、オレの背中に押し付けてるその……………あの………えーと………を何とかして下さい」
むにむにと背中に当たる柔らかい感触が嬉しいのか何なのか複雑な気分で、ロードはしどろもどろに反論する。
ボン・キュッ・ボンを具現化したような豊満ボディを持つシルフィーデは、着ているチャイナドレスも相まって、下心が無くても色々考えてしまう。
「何じゃロド坊。儂じゃ不満か」
「違いますそンなンじゃありませンとりあえずマジでその………あの………を……離して下さい………」
「…………いくらなんでも、初心にも程が有りすぎるだろお前……」
「何千年生きてんだ」、とロキが状況も忘れて悪態を吐く。
「良い歳してお前の貞操観念どうなってんの?」
「ててて、貞操とか言うんじゃねェ!!」
「成る程、お前実は未だにDTか」
「誰がDTだゴルァ!!!!ンなモンとっくの昔に捨てたわ!!」
そのまま下品な言い争いに成りかかった所で、アーサーがわざとらしく咳払いをした。
抜き身の刃で背中を撫でられる様な悪寒が走り、咄嗟に居住まいを正す。
ただし、ロードは未だシルフィーデを背中にくっ付けたままで。
「儂としては、奔放過ぎるお主の貞操を疑うがな」
「………頼むからオレの耳元でテーソーがどーとか言うの止めてくれよ……」
心做しか窶れた表情でロードが俯き、シルフィーデもこれ以上その話題に触れるのは止める事にした。
「……お話は済みましたか?」
苛々を隠そうともせずアーサーが爽やかに笑う。
最早その笑顔に、ルシファーは額を大理石の床に擦り付けんばかりに土下座する。
「そうですねぇ…………屋敷の大修復と改装で手を打ちましょうか。丁度何処も彼処も、貴方がたと市警とやらの所為でズタボロですしね。ただし、当然魔法は使用禁止です。楽をされたら罰には成りませんからね」
「それで構いませんか?」、とアーサーは頭の中で溜め息を吐くシェルバへと語りかける。
頭の中でイメージされているシェルバは、『もうどうにでもして下さい』と両手を挙げて降参の意を示した。
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