279人が本棚に入れています
本棚に追加
/477ページ
「綺麗………」
うっかり、ジェレミィは何の構えも無く宝珠を取ろうとした。
途端に鋭い電光が走り、咄嗟に跳びずさる。
暫く青白い静電気は宝珠を護るようにバチバチと輝いていたが、放っているうちに元通りになった。
掠った雷に軽く焼かれた手の傷を押さえ、さてどうするかとジェレミィは考える。
今まで経験したケースから十通り程脳内に解決策をリストアップし、そのうち使えそうな物を見出だす。
「―――Coal(召喚)。我は呼ぶ、御神の雷風!!」
突き付けられたジェレミィの指先に魔法陣が現れる。
「招来、バロン!」
紅い閃光が走り、魔法陣から異形が飛び出した。
深紅の唐獅子のような姿をした聖獣は、一度吠え猛り風を纏って宝珠を被う水晶群に突進する。
風と雷撃がぶつかり合い水晶が弾け、宝珠が台座から転がり落ちた。
それを触らないよう破けた外套で拾い上げると、バロンが擦り寄ってきた。
「はいはいご苦労様。あんまり匂い付けないでね、バルムンクが拗ねるから」
ジェレミィが軽く指を弾くとバロンは消えた。
「…………戻るの大変だなぁ」
砕けた水晶群と扉を見比べて一言。
「こんだけ魔水晶が在るって事は磁場が強すぎて転移魔法使えなさそうだし………」
渋々、ジェレミィは来た道を戻る事にした。
そしてやはり最初懸念した通り、崖を登り狭い道とはいえない道を這っていく羽目になったのである。
‡‡‡‡‡‡
久々に見た日の目は、眩しかった。
入る前に入口付近の岩場に置いておいた防水の腕時計が指す日付は最後見た時より三日過ぎ、三日あの中で過ごした事になる。
チカチカする目を擦り、深く息を吸えば新鮮でおいしい空気が肺に入ってくる。
最初のコメントを投稿しよう!