Spiral

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「さて、と………」 ジェレミィは手に抱えたぼろきれの包みを解いた。 水晶の輝きに照らされても充分美しかったが、日の光に晒されてそれ以上の輝きを放つ宝珠。 ころりと手に落とすと、そこそこの重みが伝わってくる。 防衛装置を兼ねていた水晶から離れた今は、もう雷撃が飛んでくる事は無い。 「………でもこれ、どうやって使うんだろ」 あぁでもないこうでもないと首を捻って考えてはみるが、ただ無駄に時間が過ぎていくだけ。 存在を仄めかす物は在っても過去に使われたという記述の類いが一切無いので、自分で考えるしか無い。 手に入れるのは思ったよりたやすかったと思う。 しかし何故、誰も使った者がいないのだろう。 ある意味では1番の謎である。 時折頭を過ぎる常識は、魔法の前では一切効果が無い。 キーワードは、"卵"。 「…………割ってみる?」 ジェレミィはなんとなくマーブルに聞いてみた。 しかしマーブルはといえば。 「あほー」 「…………」 鳴き声の他にたった一つだけ喋れる公共ローマ語で返して来た。 十年の付き合いだが、何故「あほ」を覚えたのかは今だ不明であった。 しかもそれ以外は覚えてくれないときた。 「だって卵は割って食べるモンだろ?」 「あほー」 「馬鹿にしてんのかよお前は!!―――あっ!?」 ついマーブルの長い首を絞めようとし、宝珠がジェレミィの手から零れ落ちた。 "卵"はカツッと岩場に落ちて、坂を転がる。 その先は、尖った岩。 「ヤバッ!」 咄嗟に岩場を滑り降り、岩に当たってしまう寸前で受け止めた。 マーブルの長い尾羽根を掴んで引き上げてもらう。 何度もこうして助けてもらった事はあるが、『そのちっこい体の何処にそんな怪力があるんだ?』とか、『何で尾羽根抜けないんだ?』等と思う所は多々ある。 今はもう気にしない事にしたが。
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