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とりあえず下山し、以後の計画を練ろうと考えたジェレミィであったが。
「げ」
念のため宝珠を回して観察したら、結構なヒビが入ってしまっていた。
「あほー」
「だぁっ、もう!!いい加減黙らないと焼鳥にするぞ!?大丈夫かなぁ…」
そう言ってジェレミィは"卵"のヒビと睨めっこする。
しかし、何故"卵"なんだろうとジェレミィが思った時。
―――ビキッ!!
一際大きな、もはや亀裂が"卵"の表面を走った。
「げっ!?マジかよ!!」
焦るジェレミィをそっちのけに、"卵"はどんどんヒビ割れ亀裂が入っていく。
―――ピシピシ、バリッ!!
"卵"が割れた。
何事かと身構えたジェレミィは、恐る恐る自身の手に載る物を見る。
"卵"の殻に埋もれるように、小さな獣が座っていた。
殻を退けると(大事な物の可能性もあるので巾着に入れた)、手乗りのリスのような翠色の生物がジェレミィを見つめ返していた。
エメラルド色の体毛と額を飾る紅いルビーが、そのリスモドキを魔獣か聖獣の類いだと認識させる。
『哀ちい目に遭ったんだね!』
リスモドキが金切り声で言った。
「お前、喋れるのかよ?それ以前に、お前何なんだよ!?」
『あたちは紅玉獣・カーバンクル!あの"卵"の中で、ずっとずっと眠ってたの!』
カーバンクルを名乗るリスモドキは、ジェレミィを改めて見つめる。
『あたちを起こしたのはちみが三人目だよ!起こしたからにはちみの願いを何だって叶えたげる!!』
「じゃぁ、伝説は本当だったんだ……でも何で願いを叶えた人がいるのに…」
『それはひみつ!ちみの願いは、[家族の笑顔を取り戻したい]んだね?』
「何で解るんだよ!?」
『ちみの心の奥底に聞いたから!その願い、聞き届けたよ!!』
「ちょ、待てよ!!何で―――」
ジェレミィの言葉を遮り、カーバンクルが謡い出した。
『―――我が額に戴くは紅き紅玉、その御力今開放せん』
「人の話聞けよKY!!」
『―――人の祈り聞き届けるは我が使命、今こそその使命を果たす時』
「無視かよっ!!」
『―――彼の者の祈り、聞き届け賜えっ!!』
カーバンクルのルビーが閃光を放つ。
ジェレミィは目が眩んで咄嗟に目を押さえた。
―――行ってらっしゃい、ジェレミィ
何故自分の名を知っているのか、その言葉が何の意味を示すのかを聞く前に、ジェレミィの意識は光に呑まれた。
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