また、逢えるその日まで

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「ん……うぅ……」 痛む頭を押さえ、ジェレミィは目を覚ました。 車が往来する喧しい音が耳を打ち、ガバッと跳ね起きた。 寝そべっていた地面は岩場ではなくきっちり舗装されたアスファルト、両脇を固めるのは岩や石ではなく建物の壁と若干危険な臭いを放つスチールのペールに打ち捨てられた角材。 「………何処だよ、此処」 慌ててマーブルを探せば、角材の山に頭から埋もれていた。 ごみ箱よりマシだとマーブルを引っこ抜く。 「あほー」 「お前のがアホだよっ!」 マーブルの「あほー」に頭を抱えつつ、更なる状況調査をしてみる。 先ず、見た感じは何処かの路地だろう。 目の前を往来する車の交通量からして街の大きさは首都クラス。 建つビルディングの様相からして、アメリカかヨーロッパか。 少なくとも二、三年前にトレジャーハントで行ったJAPANとは違う。 「………先ずは情報収集からだよな、基本は」 一人納得し、ジェレミィは市街に出た。 途端に好奇と軽蔑の視線に曝され、自身の服装を見て苦笑いするしかない。 外套どころか防弾コートまで広範囲に裂けてしまい、ブーツと中に着込んだハイネックは泥まみれ、髪と頭は埃等で汚れているに違いない。 あえて言えば、不審者・浮浪人の類いと勘違いされてしまうくらいに酷い格好だった。 もし自分がサツだったら、間違いなく捕まえているだろう。 あくまで『もし』の範疇だが。 「てか、此処………」 見渡す限りイエス・キリストの像がちらほら見受けられ、教会を示す十字架の付いた尖塔が幾つも在る。 道行く人々の三分の一は、神父やシスターもしくはその見習いの神学生。 世界で布教されている宗教の95%はキリスト教だが、此処までキリスト教色が濃い都市をジェレミィは二つしか知らない。 則ちキリスト教法王のお膝元ヴァチカンか、その姉妹都市とも言えるローマ。 しかし一般市民が多い事から、ヴァチカンでは無い。 ヴァチカンの人口の99%は法王と聖職者、そのSPだ。 第一国土面積が国とは言い難いくらい小さいのだから、こんな大都会でもない。
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