夜鷹の夢

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‡‡‡‡‡‡ ほんの少しだけ満ち引きを繰り越す水の中。 動く水に流されるようにしてクレスは居た。 分厚い硝子一枚が隔てたその先の世界は、遥か昔の感情が渦巻いている。 ―――汚いなぁ…… ぼんやりと思いながら、クレスは傍らの生き物に視線を滑らした。 血のように紅い角、紅い鬣を持ったその生き物は今眠っている。 力を使い果たして眠っていた。 クレスは、この生き物が綺麗だと思う。 体を被うその紅も、紅に見え隠れする漆黒の体も、全てが綺麗だと思った。 此処に来る前の事は、何も覚えていない。 それを"おかしい"と思った事は一度も無い。 "始めから知らない"モノを思い出せる者なんていない。 それでも此処から出る事が出来た時、何をすれば良いのかという事は知っている。 出られる時、それは自分の半身が目覚めた時。 ―――だから、暫く眠ろう ―――世界を壊す、その日迄 生き物に寄り添うように、クレスは目を閉じた。
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