また、逢えるその日まで

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少し取り残されたような感覚で、ぽつり。 「何時帰って来たんだろ……」 ジェレミィが立つそこは、子供の頃住んでいた街・ローマ。 とはいえ郊外だったが。 考えていても仕方が無いと、ジェレミィはマーブルを頭に乗せて見知った道を歩き始めた。 近辺には養父の古い知り合いが司教をやっていた教会が一つ在って、そこでシャワーと着替え、あわよくば一晩の宿を借りようと思った。 同じローマなのだから、実家には明日帰ればいい。 そう考えていたから、目的の教会の扉を開けた時、ジェレミィは度肝を抜かれてしまった。 調度訓示の時間か何かだったらしく、信者は中にそこそこ居た。 しかしジェレミィが驚いたのは通常司教が行う筈の養父母いわく[ありがた~い説法]を、神父服を着た中年オヤジがグダグダ言っていた事だった。 ジェレミィの記憶が正しいなら、此処の司教は六十を過ぎた老婆(本人には口が裂けても言えない)だった筈。 タイミングよく訓示は終わり、信者達はちらほらと帰って行く。 そこで中年神父はジェレミィに気付いたらしい。 背の低い神父はヒョコヒョコとこちらに歩いて来た。 「お前さん、この教会に何か用でもあるのかい?」 「えーと………シスター・ベラは居ますか?」 ちょっと戸惑いがちにジェレミィは答える。 「おおっ!お前さんシスター・ベラの知り合いかい。いやー、あんな別嬪さんはなかなかおらんのう、何せ尻がいい」 「(変態…………)いえ、居なければ良いです、他を当たります」 「こらこら若いの。誰もおらんとは言っとらん」 中年なのにジジイのような口調の神父は、しゃがれ声を張り上げる。 「シスター・ベラ!お客さんじゃぞ!!」 そうして返って来た声はジェレミィが知っているよりもやたら若い女性の声。 奥から現れたのは三十路半ばを過ぎた頃のシスターだった。 「おやおや、どこかでお会いしましたか?」 ジェレミィの格好には目もくれずジェレミィを品定めするように見る。
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