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シスター・ベラは首を傾げて一言。
「会った記憶はありませんよ?」
「う~ん。でも俺が知ってるシスター・ベラは六十半ばの人でこの教会の司祭だったと思ったんですけど………」
言ってからジェレミィは口を押さえた。
ぴき、と空気が少し凍る。
爽やかな笑み(逆に怖い)を湛えたまま、シスター・ベラはジェレミィに問う。
「ところで、此処には何の御用事で?」
「あぁ、え……と……シャワーと宿と、出来れば着替えを貸してもらいたくて…」
ちょっぴりジェレミィはシスター・ベラから視線を逸らした。
「御貸しするのは構いませんが。しかし申し訳ありませんが、今は空き部屋がございません」
「げ……」
諦めかけたジェレミィに、中年変態神父が助け舟を出してくれた。
尤もその手はシスター・ベラの腰に伸びており、足に彼女のヒールを喰らう羽目になっている。
「いや、一応空き部屋はあるぞい。あと三日は日本におる筈じゃて」
「……後で怒られても知りませんよ?」
「ほっほ。あやつが怒ったところで息子のようなもんじゃし、可愛いものじゃよ……しかしのぅシスター・ベラ。足が物凄く痛いのじゃが」
「なら離してください」
「年寄りの楽しみを取らんでくれ」
「……やっぱ良いです。ホテルにでも泊まります」
「……その格好では何処も泊めてはくれんと思うがのう。じゃから着替えを借りたがっとるんじゃろ」
「あ……」
変態神父に言われて、そういえばと思い出す。
「今日本に留学しとる神学生がおるのじゃが、そやつの部屋で良ければ貸そう。着替えもあやつので調度良いと思うでな」
「はぁ……ありがとうございます」
ほっほ、と変態オヤジは朗らかに笑った。
「まぁ期待はせん方が良いぞ。何せ筋金入りの朴念仁じゃ、色恋事には興味も無いし、エロ本など無いじゃろうからな」
そう豪快に笑ったオヤジは、一瞬の後にシスター・ベラの蹴りをモロに受けた。
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