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―――それは古しえより語られし、伝説
―――『卵』を手にした者は
―――あらゆる『望み』が叶うという―――
‡‡‡‡‡‡
「うへぇ………」
ジェレミィは異臭とともに岩の陰から飛び出してきたそれに、悪態とその他諸々がないまぜになったため息を吐いた。
ウネウネ動くその塊はウミウシかナメクジを想像させるが、その体表から溢れ出す粘液はまるで重油のようだ。
半ば液体のようなそいつには、ライオンすら丸呑みしそうな巨大な口と人の頭位はありそうな一ツ目があった。
職業柄たいていの物には耐性が付いているが、流石にこれは気分が悪くなった。
こんなのと相対している位なら、ナメクジが居座る部屋で寝ている方が1.5倍はマシだとジェレミィは本気で思った。
あくまで1.5倍だが。
巨大ナメクジは黒い体液を垂れ流しながらジェレミィに飛び掛かる。
壁に背を付けていたジェレミィは出来るだけ平らな足場に跳び移った。
床や壁に飛び散った粘液は、硬い岩を飴細工とばかりに溶かしていく。
「あぁらら~」
肩に掛かる黒髪を払い、双銃を抜いた。
シルバーの、機械的な大型自動拳銃だ。
上からぶら下がる適当な鍾乳石の根本に照準を合わせる。
四、五回轟音が響き、数本の尖った鍾乳石が巨大ナメクジの頭上に落ちた。
―――ジュウッ
鍾乳石は巨大ナメクジの肉に突き刺さる直前に粘液で阻まれ溶ける。
予想通りの結果に舌打ちしながら、ジェレミィは金色の刃を持つ三叉槍を召喚した。
「轟雷召来」
バチッと閃光が走り、槍の穂先から巨大な稲妻がナメクジに襲い掛かった。
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