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ルシファーが最後にこの様な状況でこれ程までに怒ったアーサーを見たのは、一体何時だったのか。
取り敢えず、一万年と二千年以上前に遡るのは確かだった。
「良いですか?家の中、ましてや人様の家に居候させて頂いている身分で何をしているんですか?まぁ人様とは言いましたがシェルバの家イコール僕の家とも言えますし、ルシファーに至っては遠戚とも言えますが…………とにかく、空から槍が降ろうとオタマジャクシが降ろうと、此処は貴方がたの家では無いのは確かです。そもそも人様の家でくだらない喧嘩をしている時点で貴方がたの程度も知れるというものです。軽はずみな行動で自分達の評価が下がっているのが判らない程貴方がたは子供なんですか?人間やらうちの若い天使達に比べたら貴方がたは随分長生きしているのですから、その程度の事も判らない筈無いですよね?」
ニッコリと微笑まれ、背筋からは蛇口の様に汗が出る。
止められない止まらない冷や汗は背筋を寒くさせ、このまま風邪さえ引ける様な気さえしてきた。
「兄様………」
「口を開く許可はしていません。ですが、まぁ……何やら僕"達"を納得させる自信があるのですか?ルシファー?」
不死で在るが為に窒息という現象を経験した事はないが、恐らくこの様な感覚なのだろう。
そう現実から逃避し始めた何処かの自分を、ルシファーは本気で殴りたい。
「俺は、別に………」
「ねぇ、ルシファー?」
知らずの内に震える声を、非情なブラックスマイルが遮る。
原因の一端が自分に有るとはミジンコ一匹分たりとも考えていないルシファーは、主な原因の八割を占める斜め後ろの二人を睨み付けた。
白熱し過ぎて完全に周りを見ていなかった自覚のあるロキと、多少冷静さが残っていたとはいえ見通しの甘かったロードである。
ロキは自身の短気さに、ロードは見通しの甘さにそれぞれ反省しているのか俯いていた。
ロードからすれば、元はと言えばルシファーの作った薬が悪いのだし、ある意味では最初から最後まで巻き込まれただけだと思うのだが、それを口に出すほどもう子供ではなかった。
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