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未来に来て一ヶ月経った。
事件という事件は起こらず、あえて言えばジェレミィもよく知っている人物がローマに来た事くらいだった。
波戸部神鵺(ハトベ シンヤ)というそのジャパニーズは、イギリス人と日本人のハーフ、そして魔族との混血というある意味稀な少年だった。
未来では養父母らと孤児院を営みつつレストランも経営、更にはギタリストで有事には日本刀を振り回すという中々多才の持ち主で、ジェレミィは[神鵺おじちゃん]等と呼んでいたものだ。
とはいえその実態は、濃すぎる魔族の血によって外見年齢17歳、今じゃ見た目がジェレミィより年下という[おじちゃん]と呼ぶには極めて不適切なものだったが。
尤もそれを言ってしまうならば、今この状況はあまりに不可思議というか何というか。
何故なら皆、ジェレミィより見た目も中身も年下である。
次から次へと現れる縁者への対応に困るジェレミィを尻目に、そんな彼らは今歌っている。
有り体に言えば、再会記念のカラオケ。
神鵺とクレス達は日本の高校で出会っただけあって、仲が良かった。
ジェレミィには養父母が真面目に高校に通う姿はちょっと想像がつかなかったが、彼ららしいと適当に受け止めている。
最初はクレス・ゼフィ・神鵺の三人とジェレミィ、神鵺の使い魔マコとで来る予定だったのだが、イルやヒヨ、バルムンクなどが混ざっていつの間にか大所帯になってしまっていた。
とはいえ歌うのが苦手なクレスは一人、ブラックコーヒーを胃に流し込んでいる。
黒っぽい銀髪を振り回しながら熱唱する神鵺は先程から高得点を連発、それに負けじと純粋な銀髪の青年が派手なロックばかり歌っている。
ロード=キャメロットという彼は、見た目こそ25歳前後だが実際は既に7000もの時を生きている不老不死の死神だ。
神鵺とロードでみっちり上位を占めたランキング。
イルはそこそこゼフィは中の上、ヒヨはもはや大気圏外という判定を受けている。
何故なら殺人的ボイスでヤング〇ンを熱唱するヒヨの番が回ってくると、皆が一斉に耳栓を捩込むくらいだった。
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